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【監修】国立成育医療研究センター理事長
先進医療会議座長
五十嵐 隆

新しいタイプの放射線治療

がんの治療法には、主に手術、薬物、放射線の3つがあります。このうち放射線治療は、エックス線やガンマ線など、体内を通り抜ける性質をもつ電磁波を使った光子線治療と、炭素や水素の原子核を利用した重粒子線や陽子線を使った粒子線治療に大別されます。近年、がん細胞だけをピンポイントで攻撃でき、周辺の正常細胞への影響はほとんどない粒子線治療に注目が集まっています。

がんの治療に使われる放射線

がんの治療に使われる放射線

正常細胞への影響は最小限。がん細胞だけを攻撃します

放射線治療は、放射線をがん細胞に照射し、DNAを切断して細胞分裂を妨害することによってがんを死滅させる治療法です。

放射線のうち、従来から使われてきたエックス線やガンマ線は、体の表面近くでエネルギーが最大になり、体の奥に入るほどエネルギーが減少します。そのため、がん細胞に十分なダメージを与えようとすると、周辺の正常細胞にも影響を与えてしまうという問題点がありました。

一方の粒子線には、照射後、一定の深さでエネルギーが最大になり、そこで停止するという特徴があります。病巣の深さに合わせて照射線量のピークを設定できるので、周辺の正常細胞へのダメージを最小限にしつつ、がん細胞だけを攻撃することができるのです。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門QST病院
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門QST病院

通院治療が可能で、日常生活への負担も小さい

1回の治療時間は準備も含めて30分程度。そのうち実際の照射時間は1分程度で、がんの種類や大きさによっては数回で治療が完了するものもあります。通院治療が可能で、日常生活への負担が比較的小さいこともメリットです。

一方、実施している医療機関が限られ、費用も高額になることがデメリットとして挙げられます。

重粒子線治療

重粒子線治療は、粒子線のうち炭素イオンを光の速さの約70%まで加速して、がんに狙いを絞って照射する治療法です。

がん細胞に対する重粒子線の治療効果は、従来の放射線(エックス線やガンマ線)や、陽子線の2~3倍大きいといわれています。そのため、照射回数を少なく、治療期間をより短くすることが可能です。

陽子線治療

陽子線治療は、水素の原子核(陽子)を加速してエネルギーを高めることでできる陽子線を治療に使います。

陽子線治療の原理は重粒子線治療とほぼ同じです。陽子を加速させるための巨大な施設・装置を必要としますが、重粒子線治療に比べると、やや小型の施設・装置で、費用も重粒子線治療より低額となる傾向です。